米国の有人宇宙探査評価委員会(Augustine委員会)、サマリーレポートを公開

NASAプレスリリース(9/8)
全部で5つのオプション(うち、Option 4には2つ、Option 5には、輸送系の選択で3つのバリエーション)を提示。主要な結論は以下:

  • 現在の予算ではLEO以遠の有人探査は実現不可能。2014年までに$3B/yearまで増額して、その後もインフレ率と同等の伸び(現計画はインフレ率-1%)とすればオプションが成立する。
  • ISSへのクルー輸送はコマーシャルサービスに委託し、NASAはLEO以遠及び新技術の開発にリソースを集中すべき。
  • シャトル引退は現実的な打上げ計画ではFY2011Q2と見込まれ、この時期までの予算を確保すべき。
  • シャトル退役後の米国の有人輸送ギャップは最低7年(NASAの見込み+2年)は見込まれ、これを短縮する案はシャトル延命しかない。
  • ISSを2015年で運用停止することは米国の利益にならず、2020年までは延長すべき。
  • LEO以遠の有人探査計画としては、現在の月面着陸を最初に目指すオプションの他に、月・ラグランジュ点・火星などの周回軌道上に人を送り込み、地上探査はロボット探査とするオプション(Flexible Option)もあり得る。どちらも可能性はあり、排他的なものではない。直接火星を目指すのは技術ハードルが高い。
  • 輸送系としては、現Ares I + Vのオプションの他に、Ares V Lite *2, EELV派生型, シャトル派生型があり、それぞれに長所と短所がある。

コメント

最終的な結論としては特定のオプションを推奨してはいませんが、前の方を読むと委員会の推奨しているところが見えてきます。読み解けるところいくつか。

  • ISSの延命はかなり強い調子で求めています。25年かけてつくって5年で運用終了するのは愚かだ、と書かれています。
  • 委員会の本命は、ISSへの物資/クルー輸送は民間に任せて、NASAはAres V Lite 2機でLEO以遠の探査に専念する、というオプションのように思われます。特にAres IによるISSクルー輸送については、時期も間に合わずコストも高い、と否定的です。
  • 打上げ能力向上策として、軌道上への燃料輸送(いわゆる"Depot")が数カ所に出てきており、今後構想の本格化が予想されます。
  • シャトル派生型(Directプランのこと)については、開発費は抑えられるが製品費が上昇することが懸念として挙げられています。
  • EELV派生型は、打上げ能力が少ないために打上げ回数が増えることが問題とされています。解決策として、NASAが自ら開発/運用を行う開発方式をやめること(USAFのようにメーカに開発を委託すること)でコストを下げられるとしていますが、NASAの強みを否定することになるので、現実味があるかどうかは疑問があると思います。