欧州、衛星用部品の米国依存脱却のためのプログラムを開始

SpaceNews(2/14)
ESA及びCNESは、現在その50%以上を米国に依存している衛星用部品を、欧州内で製造できるようにするための2年間のプログラムである European Component Initiative を2004年末から開始した。このプログラムでは、まず、衛星の重要部品のうち現在米国でしか入手できない部品を、欧州の電子機器メーカで製造するためのラインを構築することを目的とする。

プログラムは2005年末まででESAが1500万ユーロ、CNESが400万ユーロと小規模であるが、ESAでは更に1100万ユーロを追加できるよう、メンバー国に依頼している。最初のステップとして、STMicroelectoronics社とAtmel Corpが衛星用部品の製造ラインをつくることで合意した。その代償として、ESAとCNESはこれら2つのメーカに優先的に発注する。

また、欧州政府関係筋は、相互技術提供の合意の元で、日本やロシアにも計画への参加を呼びかけていると述べた。

本プログラムが開始された背景には、米国政府のITAR (International Traffic in Arms Regulations; 国際武器輸出規制) 運用が広範な衛星部品にも及んでおり、部品の調達に支障をきたす事例が出てきていることがある。

ITARはもともとは武器輸出の規制を目的とした規制であったが、中国への機密漏洩事件を発端とした1999年の改訂により、衛星及び衛星部品は全て対象となったため、輸出(部品の輸出だけでなく情報の輸出も含まれる)には国務省の認可が必要となり、認可にかかる時間が大幅に延び、また、当初あった友好国に対しては弾力的に運用されるのではないかという期待もかなわないことが明らかとなっている。

このため、欧州政府及び宇宙関連企業は米国サプライヤへの依存度の低下のための具体的手段を執り始めた。

ITARの影響は欧州版GPSであるGalileoシステムにも現れている。Galileoシステムは、当初、中国からの安価な打ち上げを期待して中国をメンバーに加えたが、米国製品の比率がITARの規制対象外とできるほど低くできなくなる見通しであるため、中国での打上は不可能となる見通しである。

ITARの影響が最も深刻に現れるのは、軌道上で衛星が不具合が発生した場合である。顧客は衛星のプライムメーカに故障解析と対策実施を求めるが、プライムメーカが米国コンポーネントメーカから必要な情報がタイムリーに得られず、適切な故障解析が実施できないケースが発生している。

また、科学ミッションの分野でも、ITARの影響で、Cassini-Huygens ミッションで実現したような米欧の協力は現在では不可能だと、欧州の研究者は述べている。

補足:日本での動き

日本では、JAXA QPL認定辞退の増加への対応から、重要部品の確保という観点でJAXAが中心となって部品の安定供給のあり方を検討しています。関連プレスリリースは下記。

コメント

上記JAXAの動きは、ITARへの対応のためというわけではありませんが、米国のITARの運用方針は現在の宇宙産業に極めて大きな影響を持っていることから、日本でも欧州と同様に、特にITARへの対応を念頭においた安定供給確保の動きが必要になってくるのではないでしょうか。